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未利用資材でクリスマス飾り

北山杉の穂先がクリスマスツリーになった

松本吉弥

北山杉のクリスマスツリー。細くてまっすぐな穂先がツリーにぴったり

北山杉のクリスマスツリー。細くてまっすぐな穂先がツリーにぴったり

細くまっすぐ育てる

「北山杉」を熟年の方ならご存じだと思います。

 このスギの生産地、京都市北区中川地区は谷あいの集落で、土も痩せていてスギの生育環境としては条件の悪いところです。北山杉は、他の肥沃な林地のように大径木にはせず、植林後早い時期から何度も丁寧に枝打ちを行ない、年輪の詰まった真円で、細く長くまっすぐに仕立てます。節のないツルツルの木肌の美しさを魅せる飾り柱や、和室の床の間にしつらえる床柱などに使われています。

 その需要に生産が追い付かない時代もありましたが、日本の人口が減少に転じ、昨今の生活様式の変化により新しく家を持つ人にお座敷の必要性もなくなり、需要と生産が減少しています。しかし、室町時代から続く北山林業を絶やすわけにはいきません。

 そこで北山丸太生産組合では北山杉の普及活動の一環として、SNSを使ったPRや研修の受け入れ、木育をはじめとする多様な体験・講演活動、インテリアデザイナーの方とともに北山杉を使った新しい空間提案などを行ない、新たな事業展開の真っ最中です。

お客さんの一言がきっかけ

 3年前の11月に林業体験のイベントを行なった際のことです。伐採された北山杉の枝葉がこのまま山に放置されると聞いたお客様の一人が、「その穂先部分が欲しい」とおっしゃるので差し上げました。すると、数日後にクリスマスツリーの写真が届きました。そのツリーは生木の緑に装飾がとっても綺麗に映え、あの時差し上げた北山杉の穂先だと気づきました。

 考えてみると筆者が小学生の頃、北山杉の絵は、長くまっすぐな幹の上に、小さな緑の△を描いていた記憶があります。その先端の形がちょうどクリスマスツリーとして使えることを、送っていただいた写真と喜びのメッセージから教えていただきました。

 そこで「喜んでくださる人がいるのなら」と、北山杉を伐採される方にお願いして穂先を当組合に持ち込んでもらい、1本400〜500円で買い取ることにしました。そして形を揃えて1.2mか1.5mに切って、2000円(送料別)で販売を始めました。

 クリスマス前にツリーをSNSで紹介し、ネット販売を行なったところ、たくさんのお問い合わせをいただき、地元新聞にも取り上げてもらったりと、思いもよらない反響がありました。

手入れをつくした北山杉

手入れをつくした北山杉

生木のスギの香りが広がる

 北山杉の生木のツリーは地産地消でもあり、モミの木とは違うよさがあります。自宅やオフィスにお届けしますと、まず梱包を解いた時のスギの香りに驚かれます。温度と乾燥に気を付けてもらえば濃い緑色のまま1カ月ほど楽しめます。とくに本物の木を間近で眺める機会のない都会の方は「いいね!」と感じてくださるようです。

 購入されるのは地元や都会の個人のほか、オフィスやお店に飾りたい、イベントでツリーを飾りたいといった大阪や名古屋などの方もあります。

 販売するとなると葉の形や色のよいものを選別し、寸法を測り、梱包して指定日時に着くように発送するなど、手間隙はかかりますが、お客様の喜ぶ様子を想像しながら運送中に枝が折れないように丁寧に梱包しています。飾る時は鉢などに入れて固定します。

 北山杉というブランドのおかげで、いろいろな方からさまざまな提案やお声がけいただけることはありがたいことです。柔軟に取り入れて、北山杉を次世代に残し、伝統の育林・加工技術を継承していきたいと思います。

(京都北山丸太生産協同組合理事)

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現代農業 2018年12月号
この記事の掲載号
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