月刊 現代農業
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ガチガチに固まったクローラの泥落としをする木村節郎さん(101ページ、依田賢吾撮影)

農閑期にやっておきたい農機メンテ。
ありがちな故障や失敗、
実際に起こったらどう切り抜ける?
未然に防いで長持ちさせるには?

故障・失敗・短命の事件簿より

農機のトラブル 私の事件簿

協力=松澤 努(長野県高森町) まとめ=編集部

チョット恥ずかしいエピソードからヒヤリ・ハットまで、読者が実際に体験した事件の数々――。長年農機具の販売・修理に携わってきた松澤努さんにも補足・解説していただきました。

松澤さん執筆の本『だれでもできる農機修理・メンテ術(仮)』が2019年発行予定

スターターのヒモが切れた事件

大阪府能勢町・伊藤雄大(33歳)

 中古の管理機のエンジンを始動させようと、リコイルスターターのヒモを引っ張ったら、元から切れました。ヒモを付け直そうと仕方なく現場で解体。ところがリコイルスターターの内部の渦巻き状の部品(スプリング)を出した後、元の場所に戻せない。ヒモもうまく巻けず。焦っていて部品も畑の草の茂みに紛れて紛失……。

 この時は手も潤滑オイルでドロドロになり手に負えなくなったので、結局あきらめてお金を払って直してもらいました。高くつきました。

松澤さんより
正しい引き方と巻き方がある

 これはホントによくあります。まずはヒモが切れにくい引き方をすることが基本。リコイルスターターのヒモの出口から、極力まっすぐに引っ張ることです。斜めに引くとヒモが擦れて切れやすくなってしまう。

 ヒモが切れてしまったら、エンジンからリコイルスターターを外します。ここでリコイルスターターをやたら分解すると中のスプリングが飛び出てしまいますので注意(詳しくは74ページ)。最近はリコイルスターターを取り外さずにヒモを交換できる機械もあります。

ヒモの引き方

出口からまっすぐ引っ張る。斜めに引くと擦り切れやすい (このページすべて赤松富仁撮影、Aも)

ヒモの交換の仕方

エンジンから外す。
ネジ3、4本で取れる

新しいヒモを、元のヒモと同じ長さに切り、プーリーの穴に通す。ロープの端はライター等であぶって固めておくとボサボサにならず通しやすい

取っ手を付ける。ヒモの端は結び目を作る

ヒモを引き出して溝に引っかける

ヒモを溝に引っかけたまま、引っ張る方向にグリグリと巻くと、プーリーが回って中のスプリングに負荷がかかる。機種にもよるが3〜5回巻く

プーリーを押さえてスプリングに負荷をかけた状態のまま、ヒモを溝から外す。プーリーを押さえる力を緩めると、プーリーが矢印のように回転してロープが中に巻き取られる

完成

燃料間違い事件

発動機、刈り払い機、チェンソー……
すべて買い替えるハメに

奈良県吉野町・竹内 一(66歳)

 発動機や刈り払い機、チェンソーなどを山に持ち込み、共同で山の下刈り。どれも混合燃料を使うべきなのに、慣れていない人がオイルを混ぜずにガソリンのみを入れてしまったことがある。すべて買い替えることになり、費用が15万円ほどもかかってしまった。

 みんなで作業するときは被害も甚大。以来、燃料担当者を決め、その人が責任をもって混合ガソリンを持参することにした。焚き火のそばで燃料を入れて引火した人もいる。共同作業では作業慣れしていない人もいるので、全員で安全確認しながら作業することが大事です。

ガソリンにエンジンオイルを加えて混合燃料を作る。割合は機械によって異なる(倉持正実撮影)

刈り払い機に軽油を入れて大目玉

大阪府能勢町・伊藤雄大(33歳)

 研修生として刈り払い機を使い始めて2日目のこと。初日ですでに「チップソーを表裏反対につけて親方に叱られる事件」をしでかしていたので、必死に草刈りをしていました。

 途中で燃料が切れたので、軽トラに乗っていたタンクから給油。ところが一度エンジンはかかったものの、その後はまったくかからなくなってしまった。「お前、まさかとは思うけど、そこにあった軽油入れてへんけ?」と、先輩からのツッコミ。そのまさかです。

 2サイクルエンジンの燃料には、ガソリンにエンジンオイルを混ぜた混合燃料を使うべきです。今でこそニオイや色で違うなとわかるけど、その時はまだ無理。修理が得意な親方の息子がブチ切れながらバラしてキャブレター(燃料と空気を混ぜてエンジンに送る装置)を直すのを、平謝りしながら見ていました。たしかキャブクリーナーで洗浄していたような。

 こんなことするのは僕だけかと思っていたけど、親戚のおばさんは、おじさんが不在の時に刈り払い機にガソリンを入れていました。どの機械にはどの燃料を入れるか、ちゃんとわかっていないとまずいなと思いました。

オイルは性能や粘度を示す規格・番数で分類されている(編)

松澤さんより
2サイクルに混合燃料を使う理由

 燃料の入れ間違いもよくありますね。エンジンには、軽油やガソリンを単体で使う4サイクルエンジンと、混合燃料を使う2サイクルエンジンがあります。2サイクルエンジンの農機は、おもに刈り払い機やチェンソー、背負い動噴、背負い動散機です。

 2サイクルエンジンに混合燃料を使う理由は、構造上オイルが入っていない(4サイクルエンジンのようにエンジンオイルを入れる場所がない)ので、シリンダーやピストンの潤滑のためのオイルを混ぜて使う必要があるからです。ガソリンと一緒に燃料にもなるので、燃焼しやすい2サイクルオイル専用のエンジンオイルが使われます。オイルにはその他にも冷却、圧縮、洗浄、防サビといった役割があります。

機械と燃料タンクに明記して間違い防止

 間違った燃料を入れてしまっても、エンジンを始動する前に気が付いたらタンクから出して正しい燃料を入れましょう。しかし間違ったまま使い続けてエンジンが止まってしまったら、正直アウトですね。エンジン固着(リコイルが引けない状態)、あるいはエンジンの圧縮がない状態ですので、高額修理が待っています。

 最近では4サイクルエンジンの刈り払い機もあります。お使いの機械は何を燃料にしているか、機械と燃料タンクに記載しておくとよいでしょう。

松澤さんに聞いた
オイルのはなし

オイルは純正でないとダメ?

 オイルと一口にいっても、エンジンにはエンジンオイル、ミッションにはミッションオイル、ギヤにはギヤオイルといろいろあります。

 メーカーさんは「純正オイルを使わないと壊れた時に保証しません」と言います。いっぽう、オイルメーカーさんは「CF10W―30」といった「オイルの規格・番数が合っていれば壊れることはありません」と言います。

 そもそも新車時の保証は機械によって違いますが、1年保証が多いです。だったらその後はどうせ保証してくれないんだから、純正オイルじゃなくてもいいのではないか!というのが私の意見です。ただし規格・番数、量を間違えないようにしましょう。

 

オイル交換のタイミングは?

 大型農機には機械に記載されています。例えば新車のトラクタの場合、エンジンオイルは初回50時間、以後100時間ごと、ミッションオイルは初回100時間、以後300時間ごとです。頻繁に使う方にはこまめな点検と交換をおすすめします。またオイルフィルターの交換も行なえば、なおよいでしょう。

 管理機や動噴などの小型農機の場合、エンジンオイルは0.5〜0.8リットルほどです。1年に1度の交換をおすすめします。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年12月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年12月号

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