月刊 現代農業
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「大鎌 編」コーナーより

これはもう快感!
大鎌すべらせ、草刈りスイスイ

長野・中川原敏雄

中川原敏雄さんは大鎌草刈りの名人。近頃は女性や自然農法に関心のある方を中心に大鎌が広がりつつある(黒澤義教撮影)

 刈り払い機はたしかに便利だが、振動や大きな音が苦手という人もいる。だったら、両手で持って立ったまま使う大鎌での草刈りはどうだろう。燃料は不要。意外と広い面積も刈れ、とにかく刈っていて気持ちがいいらしい。今回、大鎌の名人・中川原敏雄さんがその魅力や使い方を教えてくれた。信州では今、大鎌が密かなブームになっているそうだ。(編集部)

大鎌草刈りを28年研究

 民間の種苗会社に勤めた後、(公財)自然農法国際研究開発センターで品種の育成に携わり、定年後も農家として長野県松本市にある畑で野菜の育種を続けています。

 不耕起草生栽培による育種に取り組んでおり、今年で28年目です。野菜のウネ間に牧草を生やして土壌生物を増やし、草丈が40cm前後に伸びたころに刈り倒して土に還し、土を豊かにしてタネを育てる栽培法です。

 この栽培を始めたばかりのころ、いちばん苦労したのが草刈りでした。はじめは刈り払い機も使っていましたが、肩こりに悩まされました。草に集まるカエルを傷つけてしまうことも問題でした。

 かといって、片手で使う小鎌では、広い面積を刈るのに時間がかかります。そこで、西洋鎌のような両手で持って立った姿勢で使う鎌ができないかと鍛冶屋に相談したところ、刃渡りが約30cmの払い刈り鎌に135cmの長い柄を付けた大鎌を紹介されました。

 しかし、硬い草を刈るための中厚の刃だったため、重くて使いこなすのが一苦労。腕の振り方や柄の握り方もいろいろ工夫しました。試行錯誤を重ねて、10年ほどかかりましたが、ようやく2反歩ほどの畑の草や土手の草をうまく刈れるようになりました。

大鎌での草刈りの様子。刈った草はそのまま敷いておく。夏場は地温上昇の抑制になる(写真はすべて黒澤義教撮影)

アゼの草刈りも大鎌でできる。斜面の上から下に向かって刈る。刃を横に振り抜きやすいので平地よりもむしろ刈りやすい

信州鎌と出会い、さらに開眼

 5年ほど前、この鍛冶屋が高齢で引退されることになり、他の鍛冶屋を探して長野県北部の信州鎌を作る組合に相談した際に、今使っている信州鎌の大鎌と出会いました。使いやすい角度に柄込を調整し、最も軽い柄を選んで作ってもらったところ、総重量も700gほどでとても軽く、サクサクと草もよく切れました。この鎌なら、何年も経験を積まなくても誰でも大鎌で草刈りできる、と確信しました。

 まだ若くて体力があった頃は、鎌を振り回すような力任せの刈り方をしていました。いくら大鎌を使っても、これではずいぶん疲れてしまいます。しかし、信州鎌に出会ってからは、鎌の重さを利用して横に払うだけの省力的な刈り方に変わりました。疲れが少ないので長時間でも草刈りできるようになりました。

年々優しい草が増えていく

 大鎌の草刈りにはちょっとしたコツがあります。草を刈るときに、刃全体を使って一気に刈ろうとすると、刃長が長いぶん抵抗が大きくなって力が多く必要となってしまいます。信州鎌はよく切れるので、草に対して刃先から横へすべらせて払うように刈ります。すると刃先から順に草が切れ、抵抗も少なくてすみます。

 また、刈り払い機などでの草刈りは、地際まで刈るので土が乾燥しやすく、荒地に適応した草が次第に増えていきます。一方、大鎌は刈りムラは多いですが、環境への負荷は少なく、年々優しい草が増えて、草刈りも次第にラクになっていきます。

柄の長さ135cm前後で総重量700gほど。持つと意外に感じるほど軽い

払い刈り用の信州鎌は一直線の刃面が特徴。柄込の角度を変えて、振り抜く時に地面と刃が水平になるように改良した

大鎌草刈りはスポーツだ

 私は今年68歳。もうすぐ古希に手が届く年齢になりましたが、大鎌を使い続けてきたおかげで、草刈りが全身運動となって体力維持に役立っています。季節や天候によって草質が変化するので、それに合わせて刈り方を変えてみたり、体力に応じて鎌の大きさや柄の長さを調整してみたり、大鎌の技を極めることが生きがいになっています。

 信州鎌の伝統の技が込められた大鎌は、作業性だけでなく、スポーツ性もあり環境保全にもつながります。大鎌が見直され普及することを願っています。

(長野県松本市)

 草刈り鎌には、細刃型(三日月型)と広刃型(半月型)の大きく二つのタイプがある。細刃型は片手でつかんだ草に刃をあてて引きながら刈る「つかみ刈り」用で主に中部や関西以西で使われてきた。広刃型は鎌をすばやく振りぬいて刈る「払い刈り」用で関東や東北以北で使われてきた。

 中川原さんの大鎌は、広刃型の信州鎌で、刃線が一直線で鋼の部分が極めて薄いのが特徴。薄刃なので軽く、カミソリのような切れ味。鎌の背は厚く強度がある。払い刈りにはとても向いている。

 この取材時に撮影した動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。 http://lib.ruralnet.or.jp/video/

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現代農業 2018年7月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年7月号

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