月刊 現代農業
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「せん定枝を使いこなす」コーナーより

スリムなチッパーを持ち歩き
マンゴーのせん定枝
通路で砕いて、そのまま土ごと発酵
沖縄の超粘土質圃場がふかふかに

沖縄・石崎 亮

巻頭写真

小型ロールベーラー、チッパー、フレールモア……
機械の力も味方につけて、
ラクに集めて、大量に使うワザ。
各地で続々登場中!

 沖縄県南城市でマンゴー栽培をしている石崎です。私は脱サラ後、マンゴーをつくりながら沖縄県農業大学校で果樹を専攻し、2015年5月に40aの中古のマンゴーハウスを取得して正式に新規就農しました。

筆者のマンゴー

筆者のマンゴー

 現在は87aでマンゴーとパッションフルーツ及び熱帯果樹を栽培し、毎日奮闘しています。果実は沖縄県共同青果へ市場出荷するほか、非破壊糖度計で測定した果実をインターネットで個人販売もしています。

 今回はせん定枝の使い方ということで書かせていただきます。

せん定枝チップを持つ筆者(41歳)

せん定枝チップを持つ筆者(41歳)

外に持ち出すのも堆肥化も面倒

 マンゴー栽培では収穫後と春の2回せん定をします。最初は枝や葉などのせん定残渣は、炭疽病や軸腐病などの病害虫の発生源となるため、すみやかにハウスの外へ持ち出していました。持ち出した残渣は燃やすか、産業廃棄物として有料で処分しなければならず、処理費用もかさんできました。

 そこで最初に思いついたのは、せん定残渣をハウス外で堆肥化することでした。適当に野積みしておくと、1年後にはいい感じの堆肥ができあがりました。さっそくマンゴーへ還元し、一石二鳥と考えていたある日、ふとひらめきました。「ハウス外に出すのも面倒だし、その場でチップにしたらどうだろう」

 思い立ったら即行動の私。ものは試しと、5馬力の外国製ウッドチッパー(10万円弱)を購入しました。

愛用のチッパー。スリムな形で樹の間も難なく通れる。同じようなものを国産メーカーで探したが10万円以下では見つからなかった

愛用のチッパー。スリムな形で樹の間も難なく通れる。同じようなものを国産メーカーで探したが10万円以下では見つからなかった

せん定枝とえひめAIで土ごと発酵

 私の畑がある沖縄県南部はジャーガルという超粘土質の土壌で、夏場の乾燥時期に地肌が見えているところだと幅2cmもの地割れができます。そうなると地表近くの毛根が切断されてしまうので、地割れ防止と土づくりを兼ねてサトウキビの葉ガラ(トラッシュ)等でハウス全体をマルチしていました。

 しかし購入する資材ですし、1個200kg近くあるトラッシュの束を、手作業で10aに6個まくのはとても大変です。

 そこでたどり着いたのが現在の方法です。まず葉っぱがついたままのせん定枝を樹の周辺の何カ所かに集めて、その場でチッパーで粉砕。山になったチップを足でチョッチョと蹴って広げるだけです。発酵促進になればと、その日の気分で、かん水や防除のついでに自作の納豆菌やえひめAIを混ぜてまいています。これは『現代農業』でいう「土ごと発酵」!?

 もう3年間そのようなやり方でせん定残渣を処理しているわけですが、結果は大変よい感じです。

粉砕したてのチップ。せん定枝についている葉っぱごとチッパーで砕いている

粉砕したてのチップ。せん定枝についている葉っぱごとチッパーで砕いている

1年前にまいたチップ。
ほぼ土!?

1年前にまいたチップ。 ほぼ土!?

1m以上も棒が挿さった!

 せん定残渣をその場でチップにすることにより、ハウス外に持ち出したり、堆肥化する時間も手間もゼロ。処分費用もかかりませんし、せん定した樹の周辺にまくので手間も省けて作業がラクです。もちろんマルチ効果はあるし、地割れ防止にもなります。

干ばつになると大きく地割れするガチガチの土が……

干ばつになると大きく地割れするガチガチの土が……

3年でふかふかの土に!園芸用の支柱(150cm)があっさり挿さった

3年でふかふかの土に!園芸用の支柱(150cm)があっさり挿さった

 今回の執筆にあたり試しに圃場に棒を挿して確認してみると、チップをまいてある樹木まわりは1m以上もスルスルと棒が挿さりました。驚きです! これは粘土質であるジャーガルのハウスではあり得ないことです。こうした土のおかげか、収穫初期から糖度14度以上、平均17度、最高24度のマンゴーができています。

 心配していた病気も今のところ問題ありません。軸腐病などが出た枝もチップにしてまいていますが、適切に防除すれば激発したり、収量に影響することはないと思います。

 現在は今のやり方を検証するために、小祝政明氏が唱える有機農業の考え方「ブロフ理論」を勉強中です。今後さらなる作業の効率化と土づくりをすすめ、おいしい作物をつくるために頑張っていきたいと思います。

(沖縄県南城市)

土に棒を挿す動画がルーラル電子図書館でご覧になれます。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2017年12月号
この記事の掲載号
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