月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん

特集2 ザ・菌力アップ
「廃菌床 キノコ菌のかたまりだ!」コーナーより

モミガラを急速発酵させる廃菌床の力
水はけ良好、いいレタスができて嬉しい

長野・小林恵子

廃菌床のブロックには、キノコ菌の菌体タンパクがビッシリ詰まっている。
畑の菌力アップには、最強レベルの宝物。

モミガラ廃菌床堆肥の中から、廃菌床ブロックを取り出して見せてくれた小林和雄さん・恵子さん(記事は左ページ)(赤松富仁撮影)

モミガラ廃菌床堆肥の中から、廃菌床ブロックを取り出して見せてくれた小林和雄さん・恵子さん(記事は左ページ)(赤松富仁撮影)

タケノコ状のレタスばかりだった

 10年前に主人が定年になり、夫婦2人で80aを耕しています。春と秋、年2回つくるレタスとブロッコリーが中心です。

今年も生育順調なキャベツ。6月25日に播種、7月25日に定植。排水性のいい畑で、苦みのないキャベツがとれる
(赤松富仁撮影、以下Aも)

今年も生育順調なキャベツ。6月25日に播種、7月25日に定植。排水性のいい畑で、苦みのないキャベツがとれる (赤松富仁撮影、以下Aも)

 主人が勤めていた頃は、義母と2人、今の半分の面積でいろいろつくっていましたが、その頃は化学肥料で野菜づくりをしていました。「よそに負けたくない」と、向こうが4袋入れたらうちは5袋、そんなことをしていました。当時はつくればつくるほどタケノコ状の縦長レタスになり、農協に出荷しても、「こんなの箱に入らないよ、ダメダメ」と突き返され、恥ばかりかいて悔しかったです。

堆肥化の進んだ菌床のかたまり。主原料はコーンコブで、購入時は明るい黄色をしていた。非常に軽く、混ぜ込む際にほとんど形が崩れてしまう。キノコ工場から1t100円と激安で購入。大人気で、現在は申し込んでも待たされる(A)

堆肥化の進んだ菌床のかたまり。主原料はコーンコブで、購入時は明るい黄色をしていた。非常に軽く、混ぜ込む際にほとんど形が崩れてしまう。キノコ工場から1t100円と激安で購入。大人気で、現在は申し込んでも待たされる(A)

半年でモミガラの山が半分に

 30年ほど前、JA女性会のボカシ肥講習に参加しました。そして、同じころに始めたのがモミガラ堆肥。精米所からモミガラを運び、ワラと豚糞を加えて堆肥にするのです。モミガラ堆肥のことは『現代農業』の記事で知りました。しかし、豚糞だとモミガラが腐るのには時間がかかりました。

 知人に紹介され、20年ほど前から廃菌床を堆肥に混ぜるようになりました。7〜8年は豚糞と両方入れていましたが、養豚農家が廃業してからは廃菌床だけを使っています。廃菌床を入れると、モミガラが半年で半分のカサになるほど発酵が進みます。

 10月半ば、軽トラダンプに囲いをつけて(3m2)、精米所から25台分のモミガラを運んできます。水田から出るイナワラ80a分も運び、廃菌床は(株)ホクトから2tトラックで運んでもらいます。週に2〜3台来るので、そのたびに堆肥の山に継ぎ足し、2週に1回はバックホーで混ぜ込みます。年間で25〜30台分になります。運よく雨や雪が降ると急速に発酵が進み、1年もすればだいぶ分解します。畑に入れる時期は、11月下旬〜12月の年1回。10a当たり2〜3tを散布機で散布します。

キャベツ畑の横、山のように積まれたモミガラ堆肥。冬の間、2週に1度、廃菌床を混ぜ込む。夏場も1カ月に1回ほど切り返す。発酵中は、手を長く入れていられないほど熱くなる

キャベツ畑の横、山のように積まれたモミガラ堆肥。冬の間、2週に1度、廃菌床を混ぜ込む。夏場も1カ月に1回ほど切り返す。発酵中は、手を長く入れていられないほど熱くなる

水が抜ける!根腐れが出ない!

 モミガラ廃菌床堆肥で土づくりして本当によかったと感じているのは、水はけがとてもいいこと。雨の多い年に水たまりがほとんどできません。レタスの場合、水が抜けないと病気や生育不良になりがちですが、おかげで根腐れ病も出ませんし、耐病性の品種でなくとも大丈夫。

 1玉500gの平らにしっかり巻いたレタスを箱に詰めるとき、「いいレタスができたなあ」と実感します。他が出荷できない時期に出荷すれば、普段は1箱500円のところが4000円になることもあり、そうした瞬間がたまりません。

 私には子供が3人おりますが、彼らが子供のころはおいしい米や野菜を食べさせることができませんでした。今、2週に1度、レタスの箱一杯に10種類以上の野菜を送りますと、3人の孫が喜んで食べるそうです。ときどきスーパーで野菜を買うと苦いといって吐き出すそうです。子供は正直ですネ。

 土も正直で、きちんと応えてくれます。70歳です。あと何年農業できるかわかりませんが、『現代農業』のいいとこどりで、子や孫がつくってみたいと思った時、つくれる畑にしておきたいと思います。

(長野県小諸市)

嫌気発酵中のボカシ肥。材料は米ヌカ、ナタネ粕、カニガラ、魚粉、EM菌と水。肥料の空き袋に詰めて1〜3カ月でできる。苦みがなく甘い野菜をつくる決め手で、30年間愛用している(A)

嫌気発酵中のボカシ肥。材料は米ヌカ、ナタネ粕、カニガラ、魚粉、EM菌と水。肥料の空き袋に詰めて1〜3カ月でできる。苦みがなく甘い野菜をつくる決め手で、30年間愛用している(A)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2017年10月号
この記事の掲載号
現代農業 2017年10月号

巻頭特集:今さら聞けない土と肥料の話きほんのき/ザ・菌力アップ2017/石灰をバッチリ効かせる/耕作放棄地に挑む/排水を絶対よくする/酢で乾燥に強くなる/土壌還元消毒/ケイ酸&鉄で田んぼの地力アップ/果樹改植、植え穴から元気に/肥料をラクに手散布する方法/鶏糞のある農業 ほか。 [本を詳しく見る]

農家が教える 微生物パワーとことん活用読本

田舎の本屋さん 

もどる