月刊 現代農業
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アブラムシかしこく叩く

巻頭写真

アブラムシといえば、多くの農家が困る害虫。
でも、あまり知られていないことも多い。
その変幻自在の生態や薬剤抵抗性問題を踏まえ
効率的な防除法を一挙紹介。

「出てからはかしこく叩く」コーナーより

ドクター古藤の
家庭菜園診療所
アブラムシ対策編

福岡県糸島市・古藤俊二さん(JA糸島アグリ)

 JA糸島園芸センター「アグリ」(福岡県糸島市)の古藤俊二さんは、店長兼園芸技術アドバイザー。毎日、地域の人たちから、栽培についての相談がさまざま持ちかけられるが、どんな課題にも知恵と経験を総動員で応えていく。そんな日々の姿から、今では人呼んで「ドクターコトー」。地域から厚い信頼が寄せられている。

ドクターコトーこと古藤さん。おすすめの気門封鎖型の薬剤でアブラムシを撃退中

ドクターコトーこと古藤さん。おすすめの気門封鎖型の薬剤でアブラムシを撃退中

 日頃からドクターコトーが大事にしていることは、地域のものや身のまわりのものを活かした、誰にでもできる工夫を考え出すこと。今回は実際に畑に飛び出して、ドクターコトーのアブラムシ対策を教えてもらった。

まずは現状チェック!

 訪ねたのはJA糸島が技術サポートしている市内の貸し農園。訪問した4月初旬、農園にはダイコン、エンドウ、ネギ、イチゴ、ゴボウなどさまざまな野菜が育っている。まずは一緒にアブラムシの発生状況を見て回った。

良質堆肥による土づくりで人気の貸し農園

良質堆肥による土づくりで人気の貸し農園

この時期はアブラナ科、キク科、マメ科なんかにアブラムシが多く出ますね 発見 ダイコン 生長点のあたりにいるのでよく見てみましょう。あー、やっぱりいましたね ゴボウにもたくさんつくんですよねえ。うーん、これはすごい ビッシリ 体の黒いゴボウヒゲナガアブラムシ

体の黒いゴボウヒゲナガアブラムシ

ここまで増えると生育にも影響が出ますね。新しい葉がいじけて丸まっています ソラマメヒゲナガアブラムシ

ソラマメヒゲナガアブラムシ。ソラマメやカラスノエンドウなどのマメ科植物で見られる。成虫になると頭部付近が黒くなる。赤い目が印象的(赤松富仁撮影)

このあたりでは「マメグサ」
カラスノエンドウ 畑がチッソ過剰で発生しやすくなっている可能性もありそうですね

ソラマメヒゲナガアブラムシがビッシリ

それでは対策を!

 ここからは古藤さんおすすめの対策をご紹介。貸し農園でお会いした農家の畑をお借りして、やり方を実際に見せてもらおう。

 ポイントは、アブラムシの生態を利用した予防(忌避、捕殺)。まずは、光の乱反射を嫌がるアブラムシをキラキラ攻めだ。

その1 キラキラパワーで忌避

アルミホイルも防鳥テープも光が当たると乱反射します。キラキラを嫌がるアブラムシをまずは寄せ付けないようにします お会いした地域の農家に伝授 こんだけでアブラムシが来なくなるとかあ

 黄色や甘酸っぱい香りで引き寄せて捕殺。バケツにはゴマ油も入れて、溺れさせる効果をさらにアップ!

その2 黄色いバケツで捕殺

バケツ(6リットル)に入れる
魔法の液体
・水 約3リットル
・ヨーグルト 大さじ1杯
・ゴマ油 1〜2滴
・ハチミツ 1〜2滴 黄色と魔法の液体に誘われてアブラムシが次々寄ってくる

黄色と魔法の液体に誘われてアブラムシが次々寄ってくる

地域でも広がっている黄色い魔法のバケツ

キュウリのハウスで、シルバーマルチのキラキラパワーで忌避しつつ、発生したアブラムシについてはバケツで捕殺の2段構えという農家も。バケツは10m2に1個くらいの割合で配置

黄色い魔法のバケツ

その3 気門封鎖型の薬剤で退治

 アブラムシが発生してしまった時の退治には、気門封鎖型の薬剤がおすすめ。アブラムシの呼吸器官である気門を膜で覆い呼吸を止める。安全性の高い天然成分由来の薬剤でありながら、効果は確か。

使用基準に沿って希釈などして使います。希釈すると触ってネバネバするほどではないですが、アブラムシには十分な粘着力。デンプン、水アメなど原料はいろいろで、「アグリ」の店舗では20種類ほど揃えてますよツ 実際にアブラムシがついたレタスに散布 コツは、株全体に、薬液が滴るくらいしっかり散布すること。口に入っても安全な成分ですし、思い切ってたっぷりと 苦しい〜

赤い色が特徴のタイワンヒゲナガアブラムシ。膜に包まれて身動きがとれない。気門も封鎖されて退治!

手づくり酢酸カルシウムも混ぜて!

せっかく散布するのだから、アブラムシ退治といっしょに、カルシウム補給もしちゃいましょう。有機酸と複合した形で散布すると吸収率が向上します。野菜が丈夫になって健全生育が期待できますよ

カキ殻石灰(あるいは硝酸カルシウム資材)50gに対して食用酢100ミリリットルを加える

上澄み液 急激に反応して泡立つのでしばらく置く。上澄み液を取って約500倍に薄めて気門封鎖型の薬剤に混用

急激に反応して泡立つのでしばらく置く。上澄み液を取って約500倍に薄めて気門封鎖型の薬剤に混用

メカブで気門封鎖型の薬剤を自作!

メカブ(市販品)をすりつぶして、上の手作り酢酸カルシウム液と混ぜる 日々工夫を重ねる古藤さん。地の物、身の回りの物を活用した対策はまだまだあります。そんな古藤さんのアイデアを1冊にまとめた『ドクター古藤の家庭菜園診療所』が1月発売になりました(価格1500円+税)。どなたにもおすすめの1冊です。ぜひどうぞ

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2017年6月号
この記事の掲載号
現代農業 2017年6月号

特集:アブラムシ かしこく叩く
ローテーション防除/農薬を上手に混ぜて効かせる/畑の菌力アップ/続・アザミウマ、うまく叩く/キクの白さび病をシャットアウト/樹を枯らす病気、退散/厄介な病害虫対策/自作・改造で防除作業がラクラク快適/牛を助ける、サシバエ・アブ対策 ほか。 [本を詳しく見る]

ドクター古藤(コトー)の家庭菜園診療所 ドクター古藤(コトー)の家庭菜園診療所

JA糸島アグリのカリスマ店長ドクター.コトーこと古藤俊二さんが、 園芸相談室に寄せられた疑問や質問に答えた、評判の解決策の全てを公開。 手作りのぼかし肥や発酵液肥、農薬に頼らない手作りの病害虫防除資材から 菜園での天敵活用技術まで、あっと驚く独創的な技を余すところなく網羅しまし た。 [本を詳しく見る]

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